心筋SPECTと冠動脈MRアンギオグラフィ(cMRA)との3次元統合法を開発するに先立ち、3次元冠動脈マップ作成のため、3次元ボリュームMRデータとして冠動脈全長を取得する方法を開発、得られたcMRAボリュームデータから閾値法およびregion-growing法を併用することで冠動脈3枝の3次元的描出を行うことを可能とした。また、cMRAにて同時に得られる左室壁をも同様にedge-detection法、region-growing法を用い左室モデルとして再構成、左室心筋および冠動脈の解剖学的マップを完成させた。上記手法によって得られた解剖学的情報と心筋SPECTから得られる心筋血流情報との位置およびサイズの統合であるが、我々はファントムおよび正常ボランティアにて従来より頭部領域にて試みられている統合手法(体外マーカーの使用、手動による視覚的な位置あわせ)をモディファイして適応、その位置あわせの精度を評価した。結果、上記手法による両モダリティ間の位置の誤差は2-3mm以内であり、いずれの手法によってもおおむね良好な位置あわせが可能であった。しかしながら、心臓は恒常的に拍動を続けている臓器であり、両画像には動きの成分による誤差が生じてしまう。このため、我々は心筋SPECTから得られた左室血流イメージをMRI左室モデルに幾何学的な変形をおこないマッピングすることにより心拍動による誤差を軽減し、左室壁骨格と冠動脈間の相対的な空間的位置関係の精度向上を図った。引き続きこれらの基礎的検討に基づいて正常ボランティアおよび虚血性心疾患症例(労作性狭心症、陳旧性心筋梗塞)に対し、上記手法を用い冠動脈走行という解剖学的指標および心筋血流の3次元統合による両者の同時評価を可能とした。今後、虚血性心疾患症例における同統合画像手法の心筋虚血検出率向上、診断・治療方針への寄与といった評価を行っておく予定である。
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