動脈硬化症例42例における頸部超音波検査、MRA、CTおける血管狭窄・血栓や石灰化、脳虚血巣の検出に比較した結果、ACZ負荷脳血流SPECTによる脳灌流異常は鋭敏に描出され血管拡張能の脳血流SPECT評価の有効性が認められた。血液生化学による動脈硬化症の危険因子の影響を検討では高血圧症・糖尿病・高脂血症などいずれの因子を有する群でも高率に循環障害を生じるが、糖尿病のみが循環障害の出現頻度に有意差を認め、循環不全における多大な影響が示唆された。動脈硬化性変化は多くの危険因子から生じるが、脳循環障害に至る過程では糖尿病は他の危険因子より重要な因子であり、糖尿病による微小循環障害を生じることが主要血管の狭窄等と同等以上に影響すると考察された。さらにACZは平滑筋を有する中・大血管に対して血管拡張作用を発現することから、ACZ負荷時と安静時における脳循環異常の出現の差異を比較することによって傷害血管が中枢側血管と末梢血管のいずれであるのか判定し、脳循環に対する影響の大きい危険因子が糖尿病であることを示そうと試みた。30症例について検討では統計的な有意性を示すには至っていないが、糖尿病症例では血管拡張剤を使用しない状態でも脳血流低下を示す例が多く見られた。一般に動脈硬化症は血管の硬化や弾性低下のみでなく臓器への血流異常を示す病態を総称することが多いが、脳組織への血流供給などの機能的な観点から捉えた場合に糖尿病による末梢循環障害が重要であることが示唆された。また、動脈硬化症は慢性的変化であるため、血管拡張能異常のない症例の予後については短期的に捉えることが困難であったが、これ以降も経過観察を継続して検討していく予定である。
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