平成11年度も3次元統合画像を得るための微調整から研究を開始した。その結果、本ソフトウェアの臨床応用が可能と判断し、はじめに大動脈瘤の3次元統合CT画像を再構成することを試みた。血管内腔のイメージを得るためのソフトウェアであるcruising eye view法により、血流腔に相当する血管内腔の造影剤が良好に除去でき、中腔構造物として大動脈内腔を表現することが可能であった。一方、血流腔の周囲に存在する壁在血栓などの周囲組織は、多断面変換表示法によりCT値情報を有する断面像として同時に表示することが可能であった。この結果、一枚の3次元CT画像にて特定断面のCT情報とこの位置から末梢側の血管内腔情報とを同時に評価することができ、血管内超音波と血管内視鏡の両者の特徴を備えた大動脈瘤の3次元的統合CT画像を得ることが可能であった。大動脈瘤に対するstent-graft治療後の症例において本画像を作成することにより、治療後に血栓化した大動脈瘤壁と金属stentならびに正常径に復した大動脈内腔とを分離して認識することが容易となり、治療効果の判定を極めて有用な情報を提供することが可能であった。しかし、その後に骨盤部閉塞性動脈硬化症に対して本ソフトウェアを応用したところ、再構成対象となる目標血管に対して通常行うCT検査の撮像領域では最小画素単位が大きすぎること、ならびに従来のCT装置では体軸方向の空間分解能が不十分であることが判明した。これらの問題を解決すべく、現在新たに臨床導入された多列検出器型CTを用い、体軸方向に薄い検出器構成で撮像領域を限定して再度データ収集を行い、閉塞性動脈硬化症にも本ソフトウェアが対応し得るか継続して研究中である。
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