研究概要 |
チロシンキナーゼは細胞の分化と増殖のシグナル伝達開始に重要な役割を果たしており、特に癌において、その活性上昇が認められている。チロシンキナーゼは受容体型と非受容体型に分けられ、その阻害剤に抗癌剤としての期待が持たれている。受容体型チロシンキナーゼ(Epidenal growth factor receptor-tyrosin kinase,EGFR-TK)は多くの癌においてその発現が上昇しており、近年、その阻害剤が抗癌剤として開発されつつある。申請者は、EGFR-TKに親和性を有する選択的阻害剤に着目し、その放射性ヨウ素誘導体が癌イメージングならびに治療を目的とした低分子の放射性薬剤になりうると考えた。 構造活性相関に基づき、EGFR-TK阻害剤のヨウ素誘導体(以下m-IPQ)のドラッグデザインと合成を行い、目的とする非放射性ヨウ素誘導体m-IPQを効率良く合成できた。また、同放射性ヨウ素誘導体[^<125>I]m-IPQは短時間かつ簡単な操作で無担体かつ収率良く得られた。m-IPQは、EGFR-TK多量発現細胞であるA-431細胞に対してEGFR-TK阻害作用を介した細胞成長抑制作用を有し、新世代のEGFR-TK阻害剤であるPD153035と同等の成長抑制作用が認められた。癌細胞膜成分を用いたインビトロ実験の結果、[^<125>I]m-IPQはEGFR-TKに対する極めて有意な結合特異性を有し、また、本標識体のEGFR-TKへの結合量が癌細胞のEGFR-TK発現量と相関していることが確認できた。m-IPQはインビトロにおいて、EGFR-TK発現性癌細胞の膜画分に対する結合特異性や、チロシンキナーゼ活性阻害を介した成長抑制作用が認められ、EGFR-TK活性診断可能なEGFR-TK選択的放射性薬剤としての基本的性質を有することが確認できた。
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