本研究では、1)高齢者における睡眠障害の発現様式について詳細に調べるため、男女差について着目して検討すること。2)より安全な非薬物療法である光療法の睡眠障害に対する作用機序を明確にするため、高照度光照射が健常な高齢者の睡眠ならびに生体リズムに及ぼす影響について明らかにすることを主眼としている。平成10年度は、女性7名、男性5名(平均年齢61歳)について検討を行った。 1. 睡眠日誌による睡眠覚醒リズムについては明らかな男女差は認められなかった。 2. 直腸温リズムについては、位相ならびに平均値には男女差は認められなかったが、振幅は女性で高く、また、リズム波形がより安定している傾向が認められた。 3. ポリソムノグラフィの結果では、入眠潜時、レム潜時に有意な男女差は認められなかったが、睡眠期間に占める徐波睡眠ならびにレム睡眠の割合は女性で高く、睡眠期間に占める睡眠段階1の割合は男性で高かった。 4. レム睡眠における覚醒頻度は男性で高く、男性では女性と比較してレム睡眠の持続が不良であった。 5. 主観的睡眠感についてみると、明らかな男女差は認められなかった。 6. 光照射の影響についてみると、女性では高照度光照射施行後に直腸温リズムの振幅が増大していた。 また男性では照射後に波形が安定化していた。主観的睡眠感は男女ともに照射後に改善が認められたが、特に女性で有意の差が認められた。 以上より、高齢者の睡眠ならびに生体リズムには男女差が存在し、光の反応性についても両者の間に相違があることが示唆された。
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