研究概要 |
ヒト左側海馬傍回に対応する左側嗅内皮質をキノリン酸で破壊した嗅内皮質破壊ラットの精神分裂病(分裂病)モデルとしての妥当性を検証すべく、ドーパミン(DA)神経伝達系に関連した行動薬理学的変化、すなわち探索運動量、DAアゴニスト誘発性移所運動量および常同行動を同モデルラットにて検討した。 方法として、生後7週齢雄性ウイスターラットの左側嗅内皮質にキノリン酸(75nmole/0.5μlリン酸緩衝液に溶解;傷害群)、あるいは0.5μlリン酸緩衝液のみ(対照群)を注入した。破壊後2および4週にこれらのラットの探索運動量、ならびにDA releaserであるmethamphctamine(MAP;1.0mg/kg,IP)誘発性移所運動量および常同行動を測定した。行動測定後、断頭にて脳を摘出し、Nissl染色標本を作成し、組織学的に嗅内皮質の破壊を確認できたラットおよび対照ラットにて、上記のDA神経伝達関連行動の出現量の比較を行った。 現在までのところ、対照ラット15匹、傷害ラット20匹についてのデータの収集が終了しており、そのうち上記の行動解析が行われている群(傷害ラットは破壊が確認されたもののみを含む)に対する解析結果(いずれも平均値)は以下の通りである。すなわち、2W後にては、探索運動量(対照ラット/傷害ラット; count/2 hr)=119.0/103.7,MAP誘発性移所運動量(count/3 hr)=255.9/258.1,常同行動(Costallの方法によるスコア)=1.69/1.90、4W後にては探索運動量=131.6/126.0,MAP誘発性移所運動量=259.0/276.3,常同行動=1.65/1.77であった。以上の結果は、嗅内皮質破壊後4Wの時点で、傷害ラット群においていくつかのDA 伝達関連行動が増強していることを示しているものと考えられる.今後、破壊が確認できた傷害ラット数をさらに追加した群を用いての解析を行うとともに、他の特異的なDA関連行動の解析も行う予定である。今回の研究成果、今年の米国神経科学会議にて発表予定である。
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