グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)の活性レベルを認識するリン酸化特異抗体の作成をおこなった。GSK3のキナーゼ活性を決定するN末端側のセリンにリン酸基の入ったものと入らないものに対応するペプチド(リン酸化クロスタイド(GRPRTSS(p)FAEG:アミノ酸1文字表記)をウサギに免疫してその抗血清をアフィニテイクロマトグラフィによりリン酸化特異的な抗GSK3抗体が作成できた。ELISAによりリン酸化特異的に反応することが確認された。この抗体は、ヒト神経芽細胞腫SY5Yにinsulin添加によってプロテインキナーゼB(PKB)を活性化してGSK3をリン酸化させたとき、細胞のspernatant中のGSK3に対する反応性が増加し、wortmannin添加によって間接的にPKBを抑制してGSK3を脱リン酸化させたとぎ反応性が低下した。このリン酸化特異的抗GSK3抗体によるアルツハイマー病脳の免疫染色では、海馬の神経細胞、特にCAlの錐体細胞および歯状核の顆粒細胞が染色された。さらに、PHF-1抗体(神経原線維変化(リン酸化タウ蛋白)を認識する)による染色との比較では、PHF-1抗体陽性の神経細胞を強く染色し、これは神経原線維変化とGSK3との共在を意味しており、以前の我々の報告と一致するが、非活性型のリン酸化型GSK3も神経原線維変化と共在することを意味している。この所見は、GSK3はそのリン酸化の程度にあまり関係なく神経原線維変化に集積しており、より厳密な検討のために、Specificityの高い抗脱リン酸化型GSK3抗体の必要性が示唆された。
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