3年間精神科外来にて、DSMIII-RでMajor depressionと診断され、寛解期にある患者に対して心理的介入をおこなった。介入方法は、Munoz R.F.のthe prevention fordepressionを日本人向けに翻訳した「抑うつ気分の予防のための講習」を用いており、現在まで、その効果がある程度認められた。しかし、この心理教育の内容にいくつかの問題点が明確化した。まずは、気分を自分でコントロールする方法とし、思考に焦点を当てる認知的アプローチよりは、気分がよくなるような活動に焦点を当てた行動的アプローチの方が受け入れやすい。特に、対人関係の改善、ソーシャルネットワークの改善などは理解されやすい。しかし、実際の場面では、行動面の変化をよりも、最初の受け入れは困難であるけれど、思考的アプローチの方が講習後に役に立つことがわかった。そこで、行動療法的アプローチを講習を中心とし認知的アプローチは思考が気分に影響を与えているという理解にとどめた。また、ビデオの時間も長時間になると集中力が低下するために、短時間に改良した。よって講習時間は90分より短くなった。 脱落例を除いた14名(平均年齢42.9歳±12.5、男性10名、女性4名)のCES-Dは、講習前13.0±6.8が講習後9.5±10.5へと減少し、BDIも講習前10.2±5.6から講習後9.6±7.3へとわずかながら減少した。HRSDでは講習前5.4±4.5から講習後7.2±7.0と上昇し、SCLでも4.4±3.8から12.9±4.4と上昇していた。この認知行動療法的な技法を利用した心理教育の効果を講習前後のみで評価するのではなく、半年後、1年後と再発予防効果も含めた長期的効果の観察が必要である。
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