研究概要 |
平成10年度の研究においては、セロトニン選択的再取り込み阻害剤(serotonin selective reuptake inhibitor、SSRI)の一つであるparoxetineをラットに0.5,2,8mg/kgと対照群として1%CMC 1mg/kg を単回腹腔内投与して、内側前頭前野における5-HTとその代謝産物である5-HIAAを同時に脳内透析法を用いて測定した。当初の実験計画では 引き続きparoxetine 0.5,2,8mg/kgについて14日間の連続投与実験を行うというものであったが、プローベ挿入の手術後実験開始の1週間のあいだにプローベのダミーキャップが外れたり、プローベ挿入時にラットが興奮し、プローベを挿入しにくかったりということがあった。また、実験開始時に出血によると思われる5-HTの異常高値が認められるなど5-HT値のばらつきが多くみられ、統計処理できるNが集まらなかった。そのため、再度単回投与実験を精度を上げて行った。その結果、前年度は投与後180分後に最大560%の5-HT値の上昇を認め、右肩上がりの増加傾向となった。しかし今年度の実験では、投与後40-60分後で30-70%上昇し、その後下降する傾向が見られた。この結果から、SSRIの単回投与では一過性に5-HT値が上昇してもすぐに細胞体のオートレセプターが作用して、5-HTの遊離を抑制しているのではないかと考えられる結果であった。これらの結果は前年度とは異なるものであり脳内透析法の機器の精度管理の問題もあるが、SSRIの単回投与においては、内側前頭前野の5-HTは増加傾向が継続することはないのではないかと思われる。その意味でも今後、連続投与実験を行う意義はやはり大きく、さらに詳細に検討してゆきたいと思う。
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