ブチロフェノン誘導体のハロペリドール(HP)は、抗精神薬として臨床的に広く用いられている。精神分裂病患者は、HP治療が有効な治療反応群と無効な難治性群とに分けられるが、その原因は明らかでない。そこで肝薬物代謝の面からその一因について検討することにしたHPは、酸化的脱アルキル化を受け、4-フルオロベンゾイルプロピオン酸(以下FBPA)へ代謝される。当教室ではこれまでに、HPからFBPAへの代謝にチトクロームP450(CYP)3Aが関与することを明らかにした。今年度はin vivoにおけるCYP3A活性の変化が、実際にHPの体内動態に影響するかについて検討した。 3週齢の雄性Sprague-Dawley系ラットを用い、HP(0.5mg/kg i.v.)の体内動態に対するCYP3Aの阻害剤であるエリスロマイシン(100mg/kg/day 7日間)とCYP3Aの誘導剤であるデキサメサゾン(80mg/kg/day 2日間)の影響について検討した。 CYP3Aの阻害剤であるエリスロマイシン前処置でHPの血中からの消失が遅れ、またCYP3Aの誘導剤であるデキサメサゾン処置によってHPの血中からの消失が早くなった。消失速度定数を算出し半減期を求めたところ、コントロール2.4時間、エリスロマイシン前処置群4.1時間、デキサメサゾン前処置群1.2時間となり、CYP3A活性の変動によりハロペリドールの体内動態が影響を受けることが示された。 尚、ここまでの研究成果は、英文雑誌 Fundamantal&Cinical Pharmacologyにアクセプト(1999年2月4日)された。
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