研究概要 |
パニック障害は臨床遺伝学的見地から遺伝素因が強く関与していると考えられており、またその特異な薬剤反応性からノルアドレナリン仮説、セロトニン仮説、GABA仮説などが提唱されている。ことに、セロトニン受容体遮断作用のあるイミプラミン等の抗うつ剤が治療において有効であることから、恐慌性障害の発症にセロトニン受容体が関与している可能性が示唆される。また、Deckertら(1998)はドイツ人を対象とし、不安惹起作用のあるカフェインが非特異的阻害薬となるアデノシン受容体と相関を認めたと報告するなど分子遺伝学的研究も進められている。 今回、DSM-IVにてパニック障害と診断された患者と正常対照群の末梢血からフェノール法によりDNAを抽出し、パニック障害の候補遺伝子としてDeckertらの報告したABA2a遺伝子およびARA1遺伝子を想定し、それぞれの候補遺伝子について分子生物学的手法を用い、その多型性を調査し相関を検討した。その結果、日本人においてはパニック障害と正常対照群において両候補遺伝子との間に遺伝子型、遺伝子頻度ともに有意な差はなく、それらとの相関は否定された。以上の結果について1998 WORLD CONGRESS ON PSYCHIATBIC GENETICS,Bonnにおいて報告した。現在、なお症を集積中であり、これまでに行ったHTB1A、HTR2A、HTR2C遺伝子の相関研究の再検討や他の生物学的病因と考えられているアドレナリン受容体、GABA受容体の遺伝子、もしくはその近傍のDNA,マーカーなどとの相関を検討する。
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