1) 血清中の抗ヘパリン多糖鎖(HPS)自己抗体を検出するELISA法を確立し、これを用いて血栓症を有する自己免疫疾患症例には抗HPS抗体が高頻度に出現することを証明した。 2) 抗HPS抗体の結合特異性を分析するため、細胞融合法を用いて、a)ヘパリン-蛋白複合体を免疫したマウスよりマウスモノクローナル抗HPS抗体を、また、b)EBウイルスにてトランスフォームした血栓症症例末梢血リンパ球よりヒトモノクローナル抗HPS抗体を採取し、これらと血管内皮細胞表面HPS及びHPS上のATIII結合部位との結合性をより詳細に検討した。いずれのモノクローナル抗体もヘパリンおよびヘパリン硫酸にのみ特異的に結合し、DNA・カルジオリピンあるいはβ2-glycoproteinへの結合は認めなかった。またcell ELISA法にてヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)にも結合性を有していた。HUVECへの結合は、ヘパリンあるいはATIIIのみによって特異的に抑制され、これらの抗体が認識する内皮細胞上の抗原がHPSのATIII結合部位であることが示された。自己免疫性血栓症症例では、in vivoにおいてもこの部位を抗原とした自己抗体が内皮細胞表面HPSのATIII結合部位に結合し、血管内皮細胞の抗凝固活性を障害することにより、血栓症発現に直接関与している可能性が示唆される。
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