染色体6q14-23領域はヒト急性リンパ性白血病、膵臓癌、膀胱癌をはじめとする種々の悪性腫瘍においそ高率に欠失をしめすことから、未知の癌抑制遺伝子座の存在が示唆される領域である。我々は本研究において(1)リンパ系悪性腫瘍における染色体6q14-23領域の遺伝子欠失領域の同定と(2)同欠失領域からの新規癌抑制遺伝子の単離を試みた。HISH法を用いて352例の腫瘍検体について染色体6q15-23領域における欠失の検討を行った。その結果、352検体中61検体に染色体6q15-23領域の欠失が確認され、さらに詳細な欠失マッピングにより同領域には少なくとも6つの独立した共通欠失領域が存在すること、従って同領域には複数の癌抑制遺伝子座が存在する可能性があること、これらのうちD6S283近傍の領域(D4)、およびWI4066近傍の領域(D3)に相当する最小の欠失領域の大きさはそれぞれ500kb、300kb程度と見積もられることが明らかとなった。さらに各欠失領域についてそれらを完全に被覆する、PACおよびBACクローンによるcontigの作成を行った。さらに、これらの領域からの新規癌抑制遺伝子の同定を行うべく、D4領域のcontigの全長600kbの全塩基配列の決定を完了した。現在、得られた塩基配列からdbESTサーチ、エクソン予測プログラムを用いた構造遺伝子の単離を行い、それぞれの遺伝子について変異解析を行い癌抑制遺伝子の同定を行っている。さらに得られた塩基配列を用いて約5kbごとにPCRプライマーを作成し、PCR法によりホモ接合性欠失の検索を行っている。
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