染色体の特定の領域の欠失は、悪性腫瘍にしばしば観察される異常であるが、こうした染色体の欠失領域には癌抑制遺伝子座が存在することが予想される。ヒト染色体の6q15-23の領域は急性リンパ性白血病や非ホジキンリンバ腫の4%から20%に観察される異常であるが、また乳癌、前立腺癌、悪性黒色腫や膵臓癌など非造血腫瘍においてもしばしば観察される異常であることから、同領域にはこれら多くの腫瘍の発症に関与する癌抑制遺伝子が存在する可能性が示唆される。 本研究において我々は6q15-23にマップされる多数のPAC/BACクローンを単離し、これらをプローブとしてFlSH法により造血器腫瘍検体における同領域の欠失の解析を行った。造血器腫瘍検体352例について欠失解析を行った結果、61例に欠失が確認された。欠失地図の解析から、6q15-23領域にはD0(6q23-telomere)、D1(myb領域近傍;6q23)、D2(D6S408の近傍;6q22-23)、D3(D6S4066近傍;6q21-22)、D4(D6S1653近傍:6q21-22)、D5(D6S283近傍;6q16.3-6q21)、およびD6(S6S275-centromere;6q15-15)の少なくとも7つの独立した欠失領域が同定された。欠失頻度はD5の領域で最大を示し(47/352;13%)ついでD3の領域(44/352;12.5%)で高い欠失頻度が観察された。D1およびD5領域に関してはこれらを含むPAC/BACによるcontigを作成し、その全塩基配列を同定した。これらの塩基配列を用いた腫瘍検体におけるホモ接合性欠失の検討ではこれを見いだし得なかったが、同僚域には複数のdbESTエントリーが見いだされており、現在これらのESTについてそのcDNAの全長の単離と変異解析が進行中である。
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