研究概要 |
これまで我々は,培養細胞を用いた実験から細胞内に存在するTNFが,antioxidant enzymeであるMnSODの誘導を介し,Doxorubicin(DOX)等の抗癌剤に対し防御因子として働くことを報告してきた。このことは,細胞内TNFが、anthracyclin系抗癌剤に対する耐性マーカーになり得る可能性を示している。そこで本研究では,(1)実際に各種白血病患者から腫瘍細胞を分離し,細胞内TNF発現量とanthracyclin系抗癌剤(DOX)に対する感受性との相関を調べた。その結果、DOXに低感受性の白血病細胞では、細胞内TNF発現量及びMnSOD活性が高く、両者の間には逆相関関係が認められた。(2)細胞内発現量が低く、DOXに対して高感受性のKG-1細胞に非分泌型TNF発現ベクター(pTNF△pro)を遺伝子導入した結果、得られたクローンにおける細胞内TNF発現量及びMnSOD活性はそれぞれ4-6倍、2-2.3倍に上昇し、DOX感受性は約1/2に低下した。(3)抗癌剤治療の前後で細胞内TNF発現量を測定し,anthracyclin系抗癌剤,あるいは他の抗癌剤の治療効果予測マーカーとして臨床応用が可能か否か検討した。DOXを含む抗癌剤治療後に耐性を獲得した症例では、細胞内TNF発現量及びMnSOD活性は治療前に比べ、それぞれ約2倍、1.6倍に上昇した。一方、p-glycoproteinに関しては若干の発現が認められたが、MRPは検出されなかった。(4)Anthracyclin系抗癌剤で治療された14例中、治療に抵抗性を示した4症例(no response群)では、治療が奏功した10症例(partial response及びcomplete response群)に比べ、治療前の細胞内TNF発現量が高い傾向がみられた。(5)細胞内TNFの発現が高い患者由来白血病細胞に、アンチセンスTNFmRNA発現ベクターを遺伝子導入した結果,DOX感受性は全例で、1.4-2.5倍に上昇した。
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