研究概要 |
1. 多発性骨髄腫においてt(6;14)(p21;q32)転座により活性化されるMUM1/IRF4遺伝子の解析:(1)6;14転座は完全なcryptic translocationであり通常の染色体診断では同定できない。そこで我々はMUM1遺伝子を含む約400kilobaseにわたるPACクローンによる遺伝子地図を作成しこれらと免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子領域のYAC/bacteriophageクローンをプロープとして用いたdouble colour fluorescence in situ hybridization(DCFISH)法を確立した。その結果骨髄腫細胞株の17.6%(3/17)と骨髄腫症例の20.1%(8/38)においてt(6;14)転座が認められることを見い出した。同時にパルスフィールドゲル電気泳動法を用いた診断法も確立しMUM1遺伝子はIgH3'αエンハンサーと近接することによって過剰発現されることを証明した。また骨髄腫症例の特徴については6:14転座陽性例と陰性例において有意な差は認めなかった。(Blood92:2940a,1998,投稿中) (2) MUM1蛋白の正常リンパ節およびリンパ腫における発現様式を検討した。MUM1蛋白は活性化リンパ球の核に強く発現する事、Bリンパ球においてはCD38抗原と共発現することが多いがCD23抗原とは必ずしも共発現していない事を見い出した。さらにリンパ腫細胞における発現を検討した結果、マントル細胞リンパ腫においては発現していないがびまん性大細胞型リンパ腫においては過剰発現している症例が多く認められる事を見い出した。(投稿準備中) (3) EμSVプロモーター下に発現させたMUM1トランスジェニックマウスを作成し1年間経過観察したが現在までの所、腫瘍の発生は認めていない。(米国コロンビア大学Riccardo Dalla-Favera教授との共同研究) 2. 骨髄腫細胞株に認められたt(1;14)(q21;q32)およびt(1;14)(p36;q32)転座切断点のクローニングを行い1q21に存在するMUM2、MUM3遺伝子および1p36に存在するレチノイドシグナル関連遺伝子を同定した。またMUM3遺伝子は他のB細胞性リンパ腫細胞においても転座により過剰発現していることを見い出した(Blood92:2093a,1998)。
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