造血幹細胞の疾患であるMDSの関連遺伝子として単離したMLF1について、(1)造血器疾患における発現状態・遺伝子異常を明らかにして臨床的位置付けを行ない、(2)幹細胞の増殖と分化におけるMLF1調節機構を解析し、以下の諸点を明らかにした。 造血器疾患におけるMLF1遺伝子の関与の検討 MLF1遺伝子はAMLでは比較的未分化段階およびpost-MDS AMLにおいて発現亢進があり、MDSえもRAEB・RAEB-Tの白血病移行頻度が高いハイリスク群で亢進を認めることから、t(3;5)転座陰性例においてもMDS病態の白血病移行に関してMLF1の発現が亢進する傾向がみられる。AML65例(post-MDS、12例を含む)・MDS44例について臨床病態・予後との関連を統計的に解析した結果、MLF1高発現群では有意に予後不良であり、MDS関連の染色体異常との相関も認めた。MDSの白血病移行・予後不良因子として、応用可能と考えられた。しかし、MLF1遺伝子自体には点突然変異等は認めないことにより、MLF1伝達系の多因子の検討が必要である。 血流細胞の初期分化におけるMLF1遺伝子の関与の検討 磁気ビーズを用いて正常骨髄より各細胞系列を単離し、新たに作成した抗MLF1モノクローナル抗体を用いて検討した。MLF1蛋白は、正常造血ではCD34+幹細胞にのみ発現を認めることを細胞単位で確認した。
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