糖尿病性腎症の発症におけるポリオール代謝の役割を解朋する目的から、ヒトアルドース還元酵素(hAR)発現トランスジェニックマウス(Tg)にガラクトースを長期簡経口投与し、形態学的に検討した。 雄性Tgと雌性BDF1マウスを交配し、得られた産子のうち、ヒトAR遺伝子の導入されたマウスをTg、hAR陰性マウスをLMとして実験に使用した。TgおよびLMに生後8週目より30%ガラクトース食の投与を開始し、対照には普通食で飼育したTgおよびLMを用いた。投与簡始から10ヶ月後にマウスより腎臓を摘出し、光顕観察を行うとともに、PAS染色標本を用いて形態計測を行い、病変の定量化を図った。 実験終了時の体重、血糖は、四群間に有意差は見られなかった。体重当たりの腎重量は、ガラクトース投与Tg群、ガラクトース投与LM群ともに、Tg群、LM群に比しそれぞれ有意に増加したが、ガラクトース投与群間に有意差はなかった。光顕による。観察では、ガラクトース投与LM群で糸球体の腫大が訟められたが、メサンギウム領域の拡大は明らかではなかった。一方、ガラクトース投与Tg群では、糸球体の腫大とともに著明なメサンギウム領域の拡大を認め、小さな結節状の部分も観察された。形態計測では、ボウマン嚢断面積、系球体系締断面積は、ガラクトース投与Tg群で、Tg、LM群に比し有意に増加したが、ガラクトース投与LM群では有意ではなかった。メサンギウム領域は、ガラクトース投与Tg群でTg、LM群に比し有意に増加し、さらにガラクトース投与LM群に対しても有意に増加していた。 ガラクトース投与Tgでは、糸球体の腫大と共に有意なメサンギウム領域の拡大が生じていることが確認された。すなわち、アルドース還元酵素の高度発現が、糖尿病性腎症の糸球体病変の形成に関与していることが明らかとなった。
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