研究概要 |
IgA腎症の発症におけるT細胞レセプター(TCR)Vβ陽性細胞の関与を明らかにするために,IgA腎症およびIgA関連腎炎(紫斑病性腎炎,MRSA感染後腎炎)におけるリンパ球サブセット,TCRVβ陽性細胞の選択性を検討した. IgA腎症群38例,紫斑病性腎炎群10例,SARN群19例,正常対照39例を対象として,FACScanを用いた3カラー解析により末梢血リンパ球サブセットを測定した. IgA腎症群およびMRSA感染後腎炎群では,DR^+CD4^+CD8^-cells(CD4 single positive ce11s),DR^+CD4^+CD8^+cells(double positive cells)の比率が,正常対照より有意に高値であった.一方,DR^+CD4^-CD8^-cells(double negative cells)およびDR^+CD4^-CD8^+cellsについては,IgA腎症群と正常対照群の間に有意差はなかった.CD4^+CD25^+DR^+cells(Interleukin-2 receptor(IL-2R)陽性T cells)は,IgA腎症群で正常対照群と比較して有意に増加していた.TCRV β使用を検討すると,TCRV β5.3陽性細胞およびV β8陽性細胞の比率が,IgA腎症群では正常対照より有意に高率であり,さらにそのサブセットではCD4^+CD8^-細胞の占める割合が最も高かった. IgA腎症患者では,特定のTCRV β陽性細胞使用が高率であり,IL-2R陽性T cellsの増加も認められ,これらの免疫担当細胞を介しての多彩な免疫反応の関与が示唆された.
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