代謝性アシドーシスの際には尿中ヘの酸分泌が増加することで生体内のホメオスターシスが維持される。腎集合管、特に髄質外層内帯(OMCDi)は酸分泌能が元々高く、アシドーシスにおいても酸分泌がさらに増加することを我々は過去に報告している。このメカニズムを理解するために、我々は単離潅流したOMCDiをpHの低細胞培養液中におくことで(1時間pH6.8+2時間pH7.4)酸分泌能が増加するというモデル(in vitro acidosis)を近年開発した。本研究の目的はこのモデルにおける細胞内情報伝達系の関与を理解することである。平成10年度は以下の1)2)3)の実験を行った。 1) 蛋白合成阻害薬Anisomycin 10uMをpH6.8の溶液に加えると酸分泌増加が抑制されるが、後半のpH7.4の溶液に加えても抑制されない。 2) RNA合成阻害薬ActinomycinD 4uMをpH6.8の溶液に加えると酸分泌増加が抑制される。 3) 微小管をこわすColchicineを両方の溶液に加えるても酸分泌は抑制される。 4) 細胞内カルシウムをキレートするBAPTA-AMををpH6.8の溶液に加えると酸分泌増加が抑制される。 これらのことから、このモデルにおける酸分沁増加には、初期に適応に必要なRNA、蛋白合成がおこるとともに、細胞内カルシウムの増加がおこることが判明した。 今後はProtein kinase Cなどの関与を検討する予定である。
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