研究概要 |
1. 糖尿病性腎症腎生検組織のメサンギウム領域の定量化 腎生検を施行し組織学的に糖尿病性腎症と診断されたインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)及びインスリン依存型糖尿病(IDDM)患者を対象とした。IDDM患者は本邦には少ないため、米国ミネソタ大学のMauer教授より腎組織の供与をうけた。それぞれの腎生検組織を電子顕微鏡所見を用いたpointcounting methodによりメサンギウム領域の拡大を客観的に定量化し、一部はすでに終了した。今後も症例数を重ね、さらに検討を継続する。 2. 光学顕微鏡レベルでのin situ hybridiotion法 IV型コラーゲン(α1 chain),MMP-2,3,TIMPの各プローブを用いて、非放射性標識法によるin siiuhybridization法を行った。mRNAの発現の程度を定量化するため、糸球体一つあたりの総細胞数を数えた後、その糸球体に発現している陽性細胞数を数え、糸球体の総細胞数に対する陽性細胞数の割合を百分率で求めた。求められた百分率とpoint counting methodにより求められたメサンギウム領域の拡大の程度との関係を検討した。現在までの結果では、IV型コラーゲン(α1 chain),MMP-2,3,TIMP-1の各mRNAの発現は、メサンギウム領域の拡大の程度とは逆相関する傾向が認められた。すなわち、糖尿病性腎症のメサンギウム領域の拡大には、IV型コラーゲン(α1 chain)の産生亢進よりは、むしろMMP-2,3,などの細胞外マトリックス蛋白の分解酵素の産生の低下が関与している可能性が示唆された。今後もさらに症例数を重ね、検討を継続していく。 3. 電子顕微鏡レベルでのin situ hybridization法 さらに詳細な観察を行う目的で、電子顕微鏡レベルでのin situ hybridization法の開発も行っている。現時点では、エポン包埋の組織でmRNAのシグナルは得られないものの、Lowcryl包理非特異的な反応はあるものの陽性シグナルが得られており、今後の実験では非特異反応の消失を目的に実験を進めていく。 以上の経過および結果から、来年度には有益な結果が得られることと思われる。
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