研究概要 |
メサンギウム細胞の増殖は、慢性腎炎の進行に大きな影響を持つにもかかわらず、そのメカニズムについての結論は得られていない。これまでに各種のサイトカインが細胞増殖をもたらすこと、ある種の循環作動ホルモンが増殖を抑制することなどが報告され、これらがどのような細胞内メカニズムを有するかに興味がもたれている。申請者らは、メサンギウム細胞増殖の機序を研究する目的で、ラットメサンギウム細胞培養系を用いて循環作動ホルモンの細胞増殖に及ぼす作用を検討し、以下の結果を得ている。(1)心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP),C-typeナトリウム利尿ペプチド(CNP)は細胞増殖抑制作用を有し、その作用はCNPよりもANPの方が強力であった。またアドレノメデュリン(AM)も細胞増殖抑制作用を有していた。(2)その作用はprotein kinase A inhibitor,protein kinase C inhibitor,proteinkinase G inhibitorによりそれぞれ阻害されることから、蛋白燐酸化酵素が関与することが示唆された。(3)各種サイトカイン刺激下においてもANP,CNP,AMは細胞増殖抑制作用を有していた。現在、循環作動ホルモンとともに培養した細胞培養上清中のサイトカイン活性および細胞内燐酸化酵素活性を測定中である。今後はさらにラット腎炎モデルを用いてin vivioにおいても検討する予定である。これらの結果から、メサンギウム細胞の増殖に対する燐酸化酵素の作用機序を解明したいと考えている。
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