今年度25例の早産児において生後の中脳部面積の経時的変化を測定した。 頭部超音波を用いた早産児の中脳部面積の測定は、侵襲が少なく繰り返し行えることがわかった。測定には7.5MHzのプローベを用いることで明瞭に中脳部を描出することが可能であった。合併症のない早産児における生後の中脳部面積の変化は、生後の低栄養や生理的な体重減少の影響を受けず、胎児発育と同等の変化をすることが明らかとなった。頭囲も同様の発育変化であったが、頭囲は頭蓋の形態や産瘤、骨重積などの影響で対象毎に測定値のばらつきが大きいため、絶対値での評価は困難と思われた。対象数は少ないが、子宮内発育遅延例や染色体異常例は中脳部面積が生下時より小さい傾向が、周産期虚血性脳障害受傷例は受傷後の中脳部面積の発育抑制が認められた。この所見は今後対象を増やして再現性があるか確認する必要がある。中脳部面積の変化を経時的に評価することは、児の中枢神経発育が順調であることを示すパラメーターとして有用である可能性が示唆された。 対象のフォローアップは、乳児期の運動発達、予定日および1歳時の頭部MRI検査、1歳6カ月時の発達指数を評価している。新生児期の中脳部面積の絶対値や発達変化のパターンが、その後の中枢神経系の発達と関連するか、MRI所見を基に中脳部のみならず、大脳、基底核、脳幹、脳室などの形態計測を行い比較検討する予定である。また乳児期の発達や神経学的所見と、新生児期の中脳部面積の発達、MRI所見との関連を検討し、中脳部面積の測定が、機能的な面からも中枢神経発達の予測因子となりうるか検討したい。
|