機能的サーファクタント欠如がその発症に関与している急性呼吸窮迫症候群において、サーファクタントサブタイプ転換、すなわち表面活性の高いLarge sufactant aggregates(LA)から、活性の低いsmall surfactant aggregates(SA)への転換が促進しているとの報告がなされており、肺サーファクタトの機能障害は表面活性阻害とサーファクタントサブタイプ転換促進の両面から検討がなされる必要がある。 平成10年度は、in vitroにおける呼吸運動のモデルであるsurface area cycling法を用いて、胎便のサーファクタントサブタイプ転換促進作用についての評価を行った。また、LAからSA転換には呼吸運動による肺胞表面積の変化、およびサーファクタント転換酵素と呼ばれるジイソプロヒルフルオロリン酸(DFP)結合蛋白が関与していると考えられていることから、胎便中のサーファクタント転換酵素の同定のため、この転換に対するDFP結合蛋白質の影響についても検討を行った。 ブタ摘出肺から回収した気管支肺胞洗浄液よりLAを調整し、胎便とともにGrossらの方法に準じ、surface area cyclingを行った。LAからSAへの転換は胎便の濃度依存性に増加し、胎便によるサーファクタントサブタイプの転換促進作用が示された。さらにLAとともに胎便、DFPを添加したものを同様に回転させた結果、この転換は有意に抑制された。これらのことより胎便中にはサーファクタント転換酵素様活性を持つDFP結合蛋白質の存在が示唆された。また胎便吸引症候群においては、胎便の直接的なサーファクタント阻害作用に加えて、LAからSAへの転換の促進によるサーファクタントの不活化も呼吸障害の一因をなしていると思われた。今後、胎便中のサーファクタント転換酵素様物質の同定を行いたい。
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