本年度は一絨毛膜性双胎において超音波断層装置を用いて心拍出量、前負荷状態、臍帯循環に着目し、35例の一絨毛膜性双胎の症例を前方視的に検討を行った(双胎間輸血症候群10例、正常25例)。また、これらの症例に対し、臍帯動静脈カニュレーションによる標本固定を行い、胎盤より双胎間輸血症候群における両児の胎盤構築の比較検討を行った。 超音波による検索では、胎児心拍出量と相関するとされている下行大動脈最高血流速度において双胎間輸血症候群では両児間で差が生じ、その差が週数毎に大きくなることが明らかとなった。この差は正常例と比較して明らかに大きく、統計学的検討においても有意差を認めた(双胎間輸血症候群62.1cm/sec.、正常18.1cm/sec.;p<0.001)。また、胎盤の検索では臍帯の付着部異常が多く認められた。しかし、臍帯の付着部異常は双胎間輸血症候群が発生しなかった症例においても多く観察され、双胎間輸血症候群の発生とは因果関係が少ないことが明らかとなった。そこで、双胎間輸血症候群例2例を含む5例において臍帯動静脈カニュレーション挿入による固定後のラテックス注入による検索を行った。その結果、双胎間輸血症候群の症例の出生体重が小さかった児の方では、臍帯の卵膜もしくは辺縁付着があるだけでなく、その児の占拠する胎盤葉の数が少ないことが明らかとなった。 これらの結果より、双胎間輸血症候群はその着床もしくは胎盤の発達段階における胎盤葉の発育の差にその発生原因があることが推測され、それらの予知には超音波パルスドプラ法による胎児下行大動脈最高血流速度の測定が一絨毛膜性双胎の管理の指標として重要であることが明らかとなった。
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