研究概要 |
本年度は前年度の超音波血流計測の結果より、一絨毛膜性双胎(MD Twin)の管理方針を作成し,external checkともいえる前方視的な検討を行った。また、前年度に引き続きMD Twinにおける胎盤内の血管構築についても検討を行った。 超音波血流計測に関しては今年度から検査者を複数とし、computerによるdata base管理を導入した。昨年の結果から両児の下大動脈血流速度の差が30cm/sec以上となることを集中管理の基準とし、その他の超音波検査項目は参考項目として管理を行った。この管理方針に基づき本年度は双胎間輸血症候群(TTTS)4症例を含む13症例のMD Twinの管理を行った。この内1児は子宮内胎児死亡を起こしたが、これはその予測が可能であったにも関わらず、児の未熟性から妊娠継続し、子宮内胎児死亡に至った症例である。それ以外の症例は重症例を含め適切な時期に、分娩とすることができたが、新生児早期に脳室周囲白室軟化症を認めた症例が1例存在した。以上より、この管理方針は子宮内胎児死亡を防ぐ点で有効であると思われたが、TTTSにおける中枢神経病変の胎内発症の予防には、さらなるParameterの検討が必要であることが推測された。胎盤の血管構築の検討では4例のTTTSを含む9胎盤で検討を行った。TTTSでは、その発生に胎盤内での両児間の血管吻合が関与しているとされながら、ほぼ全てのMD Twinに血管吻合が観察されている。そこで我々は両児の臍帯動静脈よりラテックス注入を行い、両児の占拠している絨毛量と血管吻合の関係に着目し検討を行った。その結果、TTTSでは胎盤内に占める両児間の絨毛量に極端な違いがあることが判明し、この絨毛量の違いのある症例に何らかのtriggerが加わることがTTTSの原因ではないかと考えられた。なお今回の検討では胎盤深部での血管吻合が認められた症例は存在しなかった。
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