研究概要 |
バゾブレシン(AVP)分泌不適切症候群(SIADH)の患者では持続的なAVP分泌亢進にもかかわらず、利尿が保持されることが知られ、いわゆるAVP不応(AVP escape)が存在する。本研究では、持続的なAVP過剰状態におけるAVP受容体とアクアポリン-2(AQP-2)の調節がどのように連関するかを検討した。雄SDラット(250〜280g)にdDAVP(5ng/h)を浸透圧ミニポンプで投与し、食餌はすべて液体食(40ml/day)にして、実験的SIADHラットを作製した。SIADHラットはdDAVP投与後、1時間、3時間、12時間、48時間、7日および14日目に断頭して腎を摘出した。また、雄性SDラットを24,48,72,96時間の絶水負荷後、断頭して腎を摘出した。各々について腎内AQP-2mRNAの発現、AQP-2蛋白量および[^3H]AVP受容体結合能を検討した。SIADHラットではdDAVP投与後2日目に血清Na119mEq/l,Sosm 249mOsm/kg H_2Oまで低下し、水利尿不全が惹起された。[^3H]AVP受容体結合では、Bmaxは1.65x10^<-9>M/mg蛋白から2日目には0.38x10^<-9>M/mg蛋白に連続的に減少し、以降大きな変化は見られなかった。腎AQP-2mRNA発現は2日目には対照の158%に増加、14日目でも138%に保たれた。AQP-2蛋白は投与12時間後増加したが、14日目には対照の70%に減少した。絶水ラットでは[^3H]AVP受容体結合はBmaxは3.63X10^<-9>M/mg蛋白から急激に減少(96時間、0.59x10^<-9>)したが、kdは大きな変化が見られなかった。腎AQP-2mRNA発現は48時間後3.1倍に、AQP-2蛋白は1.2倍に増加した。外因性、内因性の持続的なAVP過剰状態では、AQP-2の発現は持続的に亢進して抗利尿作用を維持する。遷延する状況でみられるAQP-2mRNAの発現、蛋白の減少が部分的な水利尿の回復に関与することが考えられる。この変化は主にAVPV2受容体の結合能と密接に連関することが示唆される。次年度の研究ではAVPV2受容体自身の発現調節を含めて、AVP escape現象におけるAVPV2受容体、AQP-2連関の解析をさらに進めたい。
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