腎集合尿細管細胞に存在する水チャネルaquaporin-2(AQP-2)は下垂体後葉ホルモンarginine vasopressin(AVP)反応性の水チャネルで、細胞内情報伝達物質cAMPを介して、AQP-2の転写活性が調節されている。AVPによるAQP-2の調節には、速やかな調節系と持続する調節系が存在する。AVP分泌不適切症候群(SIADH)モデルラットにおいてAVPが持続的に高値を示す時、AVPV_2レセプターは速やかにdownregulationされるが、AQP-2mRNAの発現は持続的に亢進して、upregulationを受けていることを昨年度の研究で明らかにした。従って、AQP-2の調節にはAVP以外の因子が関与している可能性も否定できない。AQP-2発現調節にAVP非依存性因子も存在するか、内因性AVPの欠損する遺伝性尿崩症ラットhomozygous Brattleboro ratsを用いて検討した。雄Brattleboro rats(250〜280g)にDDAVP(10ng/h)を浸透圧ミニポンプで投与して24時間後、尿量と腎内AQP-2mRNA、蛋白発現を調べた。また、Brattleboro ratsに12時間の絶水負荷を行い、尿量、Uosm、血清Na、血漿AVP濃度とともに腎内AQP-2mRNA発現、AQP-2蛋白、尿中AQP-2排泄を調べた。対照として、Long-Evansラットに絶水負荷(同程度の脱水を惹起する64時間)を行った。Brattlebororatsに外因性DDAVPを投与すると、腎内AQP-2mRNA、蛋白はそれぞれ対照の2.2、2.5倍に増加した。12時間絶水したBrattlebororatsでは、血清Naは142から153mEq/lに増加したが、血漿AVPは低値のままで、腎内AQP-2mRNA発現、蛋白および尿中AQP-2排泄も不変であった。同程度の脱水のLong-Evansラットでは腎内AQP-2mRNA発現、蛋白はそれぞれ3倍、2.7倍に増加した。また、尿中AQP-2排泄もDIラットの3倍であった。以上より腎内AQP-2の発現調節はAVP依存症で、非依存性因子は存在しないことが示唆される。
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