研究概要 |
高橋らは、白人の1型糖尿病患者やその第一度近親者では、樹状細胞でCD86の発現が低いために、Th2タイプの調節性T細胞が誘導されにくく、Th1優位の状態によってβ細胞破壊が進行し、糖尿病発症につながる可能性を以前報告した。(J Immunology,1998) 本研究において今年度は、日本人の1型糖尿病患者の単球由来樹状細胞(MoDC)の形質と機能とを明らかにし、白人1型糖尿病患者及びその近親者で認めた異常を伴うか否かを確認した。 東北大学医学部第三内科通院中の抗GAD抗体ないしは抗IA-2抗体陽性の1型糖尿病患者(男性4名、女性4名、年齢16-47歳)を患者の同意に基づき対象とした。また、性、年齢(23-39歳、p=0.25)をマッチさせた対照を選択した。末梢血単核球中のプラスチック付着性細胞を、GM-CSFとIL-4存在下で1週間培養しMoDCを得た。MoDCの収率には両群間で有意差は認めなかった。CD86分子(B7-2)発現の平均蛍光強度は、患者群で優位に低かったが(p=0.035)、HLA-DR、CD80、CD1aの発現には有意差を認めなかった。MoDCと自己CD4陽性細胞との自己混合リンパ球反応(AMLR)は、患者群で有為に低下していたが(p=0,002)、同種混合リンパ球反応では両群同等の増殖反応が観察された。 以前、高橋らが、白人の1型糖尿病で報告したMoDCに関する知見が、人種を超えて認められることが確認された。今後、1型糖尿病の病因論における、抗原提示細胞の異常の意味を分子レベルで明らかにし、high riskにある第一度近親者の糖尿病発症一次予防の作用点となるか否かについて検討を進めていく予定である。
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