研究概要 |
1) 網膜毛細血管細胞の培養系を用いたin vitroの研究 糖尿病網膜症の初期の組織学的異常として以前より周細胞の消失が指摘されている.周細胞になんらかの機能障害が生じ、アポトーシスを起こすと考えられるが、糖尿病状態における周細胞の機能変化の評価として、培養周細胞のミオイノシトール(Ml)取り込み能に対する高グルコース及びアルドース還元酵素阻害剤(FK366)の効果を検討した.その結果、細胞内に取り込まれたMlは対照と比較し高グルコースでは30.6%低下した,これに対して,FK366を添加することによりMl取り込みは濃度依存的に有意に増加した.すなわちFK366は糖尿病における周細胞の代謝異常を改善することで網膜症の発症を防止する可能性が示唆された.この研究成果の一部は、第13回糖尿病合併症学会、および第5回日本糖尿病眼学会に発表した。 2) 糖尿病モデル動物(Goto-Kakizaki Rat)を用いたin vivoの研究 糖尿病網膜症においては,初期変化として無細胞血管や周細胞の消失等が認められるが,その発生に血管細胞のアポトーシスが関与していることを報告した。本研究は糖尿病のモデル動物であるGKラットの網膜標本を作成し,その組織学的変化及びアポトーシス細胞数を計測し,それらが抗酸化物質および蛋白糖化阻害剤(OPB-9195)により改善を認めるかどうかを検討するものである。GKラット30匹を101匹ずつA,B,Cの3群に分け,A群は通常の食餌で飼育し,B群にはascorbic acidとα-TocopherolをC群にはOPB-9195を含む食餌を与えている。また,対象としてWistar rat 10匹を通常の食餌で飼育中である(D群)。平成11年1月よりGKラットおよびWistarラットの飼育を開始した。6ヶ月および12ヶ月の飼育後に眼球を摘出し、網膜標本を作成する予定である。
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