糖尿病状態におけるGIP刺激によるインスリン分泌の低下の機序を明らかにすることを目的とし、ラットを用いて膵灌流を行った。灌流を行う際、GIP、ブドウ糖、cAMP産生を促進するforskolin、PI_3キナーゼの阻害剤であるwortmanninを組み合わせて刺激し、そのインスリン分泌量を経時的に観察した。wortmanninは膵灌流の系でグルコース単独刺激による第2相を促進し、またGIP、forskolin刺激によるインスリン分泌をさらに促進した。さらに、単離膵島を用いて細胞内cAMP含量を測定したところwortmanninによりグルコース単独刺激時のcAMP量は上昇した。また、GIP、forskolin刺激によるcAMP量の上昇をさらに促進した。そこで細胞膜を容易に通過し、かつphosphodiesteraseに分解されないcAMPのアナログであるN6-benzoil-cAMP 0.1mMを加えた刺激を行い、wortmanninのインスリン分泌に対する影響について検討したところwortmanninはbenz-cAMP刺激によるインスリン分泌に影響をあたえかった。Wortmanninによるインスリシ分泌促進の一つの原因として、cAMPによるインスリシ分泌促進機構が関連していることが考えられた。さらに、wortmanninによるcAMP上昇は、cAMP分解酵素phosphodiesteraseを抑制することによる可能性も示唆された。これらの結果より、PI_3キナーゼはphosphodiesteraseを介してインスリン分泌を抑制する機構に関わっている可能性が示唆された(以上の結果を第41回糖尿病学会総会にて報告した)。 ハムスターGIP受容体、ヒトGIP受容体を発現プラスミドに組み込み、CHO細胞に導入し、新たな細胞株を作成中であり現在遺伝子の導入を終え、細胞株のクローン化を行っている。今後この細胞株を用いて各種のリガンドとの結合やシグナル伝達に重要なカスケードを決定する。
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