研究概要 |
これまで、我々は、ヒト1型糖尿病の優れたモデル動物であるNODマウスにおけるサイトカインバランス異常の糖尿病発症に関わる重要性について報告してきた(Shimada et al,Diabetes,1996).そこで、今回、実際ヒト1型糖尿病に適応できるのかどうかを検討した.ヒト1型糖尿病のうち、インスリン依存状態で急激に発症するタイプの発症直後でインスリン使用前の血清を用いて血中IFNγ値と抗GAD抗体価(IgG1type)との関係を検討すると、日本人1型糖尿病に多いHLAのDR4もしくはDR9を有する場合に、両者は逆相関した(p<0.02).さらに、発症年齢と抗GAD抗体価は正相関した(p<0.02).すなわち、NODマウスと同様、polyclonalなTh1タイプの反応と膵β細胞抗原特異的なTh2タイプの反応とのバランスにより発症が規定される可能性が示唆された.また、1型糖尿病のうち、インスリンを必要としない状態で発症した抗CAD抗体陽性糖尿病において、抗GAD抗体高力価群(10u/ml以上)と低力価群(10u/ml未満)とに分けた場合、臨床的に5年以内にインスリンが必要となるのは、大部分が抗GAD抗体高力価群であることを見出した(大部分の抗GAD抗体低力価群では、発症後10-20年経過してもインスリンが不要)が、さらに、この両者間で、T細胞のサイトカイン反応に違いがあるのかどうかを検討したところ、40歳以上に絞ると高力価群は低力価群に比し、IL10産生能が低く、抗GAD抗体価とIL10値とは正相関した(p<0.03;低力価群ではこのような関係は認めない).つまり、抗GAD抗体高力価群は、インスリン依存状態で発症する典型的な1型糖尿病と同様の病態を有する可能性が示唆された(これに対し、低力価群は、臨床的にもサイトカイン反応もいわゆる"NIDDM"と同様の病態を有するのではないかと考えられる).現在、末梢血リンパ球の膵β細胞抗原特異的サイトカイン反応の検出を試みており、さらに詳細に検討中である.
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