研究概要 |
ストレプトゾトシン(STZ)糖尿病ラットと正常ラットの新鮮脳薄切片を作製し,自律神経高位中枢である中隔核(LSN),記憶に関与する海馬核(CAl)の神経細胞の興奮伝播を電位感受性色素を用いた光学的記録法にて測定し,低グルコース溶液を摂氏32度15分間灌流しその変化量を検討した.1mMグルコース液灌流後,LSNでは約10分で光学的応答の抑制が見られたが,CAlでは10分後は増強傾向が見られ15分後にわずかな抑制しか見られなかった.液温を24度に下げるか2mMのグルコース液を潅流すると,どの神経核でも応答抑制の発現時期の遅れ,程度の減少が見られた.以上より脳神経核により低血糖に対する感受性が異なることが示唆された(第21回日本神経科学大会にて報告).一方STZ注射後1ヵ月以降の糖尿病ラットでは低グルコース(2mM)による応答抑制は,どの神経核でも正常ラットと比較して強く現われたが,その程度はLSNで顕著であった.以上よりSTZ糖尿病ラットの脳では低血糖に対する感受性が増強していることが示唆された(第76回日本生理学会大会にて発表予定).また,正常ラットのしSNで最初の低グルコース(1,2mM)による興奮応答の抑制を認め,通常グルコース投与により元の状態に復した後,再度同濃度低グルコース液を投与しても応答抑制は見られなかった(In Vitroでの低血糖閾値の低下).CAlでも2回目投与の低グルコースによる応答抑制は1回目投与に比較して有位に少なく,LSN,CAlともこの低グルコースに対するAdaptationはモノカルボキシレイトトランスポーター(MCT)の抑制薬存在下で変化しなかった.(第42回日本糖尿病学会年次学術集会にて発表予定).
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