研究概要 |
本年度は,酸化したphosphatidylcholine(PC)を認識するモノクローナル抗体を用いて,ブタの虚血再灌流障害肝における酸化LDLの分布を免疫組織学的に検討した. [方法]ヒト粥状硬化病巣より生成した,PCの過酸化生成物であるPCOOHなどと反応する抗酸化LDLモノクローナル抗体FOHla/DLH3を板部博士より供与いただき使用した.虚血・再灌流を施行したブタの肝組織に,SAB法で免疫染色を施行した.酸化PCの生化学的な指標として肝組織中のPCOOHをCL-HPLC法で測定した. [結果]酸化PCは,陽性対照のヒト大動脈壁では泡沫細胞に陽性像が確認された.正常肝では脂肪滴を含有する肝細胞に陽性細胞が散見されたが,ほとんどは陰性であり,類洞壁細胞にも陽性像は認めなかった.しかし再灌流開始後には肝組織中PCOOHは高値となり,免疫染色においても陽性像を呈する肝細胞の増加が認められ,肝組織における脂質過酸化反応の進行が生化学的,組織学的に確認された.また,時間的経過に従ってKupffer細胞を中心とした類洞壁細胞にも陽性細胞が出現した.これらの陽性反応および肝組織中PCOOHは虚血時間に従って増加する傾向が認められた. [総括・展望]虚血・再灌流肝では脂質過酸化反応が虚血時間の長さに相関して進行するが,その反応には肝細胞のみではなく,非実質性の各種類洞壁細胞も関与している可能性が示唆された.虚血再灌流によって活性化されたKupffer細胞の貪食作用,あるいは類洞内皮細胞障害に酸化LDLが関与していることが考えられる. 平成11年度はラットでの虚血再潅流,敗血症の他に肝切除後のPCOOH発現も計測したいと考えている.
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