腺癌を中心とした消化器系癌手術症例中、絶対非治癒切除例を対象にalternative pathwayによる特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導とこれをエフェクターとした養子免疫療法を研究している。CTLの誘導に関しては自家腫瘍細胞株を樹立できた3症例に対し、alternative pathwayの概念に沿った2段階混合刺激培養(MLTC)で誘導を試みている。現段階ではCD14^+細胞の多寡がCD4^+リンパ球の分化に強い影響を与えていることが判明している。すなわちCD14+細胞の多い条件でのMLTCではTh2の分化に優位に働くと思われ、alternative pathwayによるCTLの誘導に極めて不利な状況になる。これは培養上澄液に含まれるサイトカインの分析より示唆された。この趣旨の報告は第36回日本癌治療学会総会および第60回日本臨床外科学会総会ワークショプで発表した。CTLをエフェクターとする養子免疫療法については当研究機関内の倫理委員会の承認を平成10年11月に得て、平成11年3月より自家腫瘍細胞株を樹立した大腸癌絶対非治癒切除症例を対象に行っている。臨床効果についてはまだ十分な回数を施行していないので来年度の検討となる。これまでの研究では進行癌担癌宿主では抗腫瘍免疫が強く抑制されているために、通常のMLTCではTh1 CD4^+Tリンパ球の活性化すら容易ではない。しかしOK432などのいわゆるBRM製剤をMLTCに少量添加することが有効である例が散見されている。このメカニズムについては抗原提示細胞の活性化が重要な役割をしていると考えられるが、今後の検討が必要である。
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