腺癌を中心とした消化器系癌手術症例中、絶対非治癒切除例を対象にalternative pathwayによる特異的細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導とこれをエフェクターとした養子免疫療法を研究してきた。CTLの誘導に関しては自家腫瘍細胞株を樹立できた症例に対し、alternative pathwayの概念に沿った2段階混合刺激培養(MLTC)で誘導を試みた。MLTC開始時のCD14^+細胞の多寡がCD4^+Tリンパ球の分化に強い影響を与えていることが判明した。すなわちCD14^+細胞の多い条件でのMLTCではTh2の分化に有意に働くと思われ、alternative pathwayによるCTLの誘導に極めて不利な状況になる。これは培養上澄液に含まれるサイトカインの分析より示唆された。また、OK432が抗原提示細胞の活性化を促進するが、抗原提示能には濃度依存性を認めず適量域がある事が疑われた。CTLをエフェクターとする養子免疫療法については当研究機関内の倫理委員会の承認を得て、自家腫瘍細胞株を樹立した大腸癌絶対治癒切除症例を対象に行った。文書でのinformed conceptによる同意を得られた症例にのみ臨床応用を行った。広範なリンパ節転移を標的とした症例で2回目の誘導からCTL活性をin vitroで認め、活性化リンパ球を静注した。合計7回の静注を行ったが副作用はみられず、それまで上昇し続けていた腫瘍マーカーが2ヶ月間上昇しなかった。自覚症状も改善したが、臨床効果はminor responseと判定した。静注は肺を標的にした治療には有効であるが、肺以外の標的には効果が少ないとする報告があり、投与法には今後の検討が必要である。
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