研究概要 |
本研究は、癌の胸腹膜播種を制御するための、生物学的治療法の開発を目指すものである。平成11年度の研究成果の概要は以下の如くである。 1)Interferon-γ(IFN-γ)遺伝子の培養中皮細胞および癌細胞への導入 IFN-γcDNAを組み込んだプラスミドをlipofection法により、中皮細胞および癌細胞に遺伝子導入し、mRNAの発現を確認した。培養中皮細胞にはIFN-γmRNAは通常は発現していないことは昨年度の実験で確かめている。また遺伝子導入中皮細胞の培養上清にIFN-γ蛋白が産生されていることも明かとなった。 2)遺伝子導入後の中皮細胞のviability 遺伝子導入後、癌細胞の多くは生存するが、中皮細胞は死滅細胞が増えてくることが分かった。これは遺伝子導入による細胞傷害に加えて、lipofection法の条件設定を改良すべきと考えられた。現在アデノウィルスのIFN-γ遺伝子ベクターを検討している。 3)外科手術後の胸腹腔内滲出液の浸潤増強活性の解析 臨床で胸腹膜播種制御を考えると、外科侵襲の腹膜播種に及ぼす影響が重要である。このため、肺切除術後の胸腔滲出液を採取し、高濃度のHGF(hepatocyte growth factor)が検出されること、滲出液中に癌の浸潤増強活性が存在すること、その活性にHGFが関与していることを見つけた(BrJCancer81:721,1999)。
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