研究概要 |
癌抑制遺伝子Rbは細胞周期G1期制御因子の一つである.肝癌におけるRb遺伝子構造異常を伴うRb蛋白発現欠失は報告されているが、このeventが肝癌の発生、進展、転移にどのように関与しているかは不明である。なお、肝癌におけるRb蛋白過剰発現につき、まだ報告されていない。本研究はヒト多段階肝発癌過程におけるRb蛋白発現異常(発現欠失及び過剰発現)の役割を明かにした。 背景肝(肝硬変及び慢性肝炎),Large regenerative nodule(LRN)、前癌病変であるAdenomatoushyperplasia(AH)は全例ともRb蛋白発現正常であった。肝癌(104腫瘍)ではRb蛋白発現欠失24%、過剰発現24%であって、Rb蛋白発現欠失及び過剰発現は肝発癌に関与することが示唆された。Rb蛋白発現異常は、原発巣において高分化癌では4%、中分化癌では37%、低分化癌では93%であって、分化度の低下に従って有意に(p<0.001)高頻度に認められ、肝癌進展に寄与すると考えられた。転移巣ではRb蛋白発現異常率は83%であって、原発巣の38%と比べ、有意に高値を示し、Rb蛋白発現異常は肝癌転移において重要な役割を働いていると思われた。なお、Rb蛋白発現異常は、AHでは全く、高分化癌では殆ど認められなかったので、肝発癌の早期段階に関わる可能性が低いと考えられた。 以上よりRb蛋白発現異常(発現欠失及び過剰発現)は肝癌の進展、転移に促進的に働いているという新たな知見が得られた。現在肝癌におけるRb蛋白発現異常とp16蛋白発現異常の関連性につき検討中である.
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