研究概要 |
【はじめに】胃癌における腹腔内洗浄細胞診は腹膜再発の予測因子として診断的意義は高い。しかし形態学的診断であるため反応性中皮細胞混入などの状況下においては診断は必ずしも容易ではない。悪性腫瘍の80〜90%はテロメラーゼ活性を有すると言われており、診断法として期待が寄せられているが、リンパ球由来の活性による偽陽性、PCR阻害物質の混入による偽陰性反応があり問題となっている。腹腔内洗浄水においても活性検出可能相当数のリンパ球がしばしば認められる為、とりわけ少数の癌細胞による活性の有無の判断は困難である。 加えて混入した他の血球成分による反応阻害も検出を困難にしている。上記理由により従来のTRAP assayは信頼性が低い可能性がある。そこで上皮細胞に特異的に結合するImmunomagnetic beads(IMB)で検体を処理した後にTRAP assayへ持ち込む方法の有用性を確認するとともに臨床検体への応用も行った。 【方法】1, 健常人リンパ球、末梢血、細胞株KATO-IIIを用いたモデルでIMB処理後にTRAP assayを施行した。 2, 胃癌患者28例(se9例,ss6例,mp4例,sm6例,m3例)を対象とし、開腹時の腹腔内洗浄水をIMB処理後にTRAP assayを施行し、細胞診の結果と比較した。 【結果】1, IMBによりリンパ球、その他の血球成分は除去され、かつ癌細胞の活性はTRAP assayへ持ち込むことが可能であった。 2, 深達度se,ssの15例中7例が細胞診classVで、これらを全て含む9例がテロメラーゼ活性陽性であった。一方、mp,sm,mの13例は全例とも細胞診classIで、テロメラーゼ活性も全例陰性であった。 【まとめ】IMBを用いることにより、リンパ球およびPCR阻害物質の両者が排除でき、TRAP assayの正確な判定が可能である。今回、深達度se,ssで細胞診陰性の2例にテロメラーゼ活性陽性を得たことは、我々の考案したassayの精度が細胞診より高い結果と言える。臨床的意義との関係が次の検討課題である。
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