腹腔内洗浄細胞診は古典的な癌細胞検出法であり、細胞診陽性と生存率の低さには正の相関が報告されている。しかしながら細胞診の検出感度は必ずしも高いとはいえない。 そこで癌細胞に特異性の高いテロメラーゼ活性測定を、胃癌手術時に得られた腹腔内洗浄水中の癌細胞の検出に応用した。従来のtelomeric repeat amplification protocol(TRAP)assayでは早期癌の5検体中3検体に活性を認め、さらにリンパ球を多く含んだ肝硬変患者の腹水中にも強い活性を認めた。末梢血単核球1×10^4からも明らかに活性が認められたことより、これらの陽性反応は検体中のリンパ球に由来するものと考えられた。そこで上皮細胞に特異的に結合するimmunomagnetic beadsで検体を処理し、リンパ球を除去した後にTRAP assayを行う方法(ビーズ法)を考案した。基礎的検討では末梢血単核球1×10^5においても活性を検出せず、一方、KATO-III10個相当の活性は検出可能であった。ビーズ法を用いた臨床検体の測定では漿膜下浸潤以深の20検体中10検体が陽性であり、粘膜〜筋層浸潤の14検体は全例陰性であった。細胞診は漿膜下浸潤以深の20検体中9検体が陽性であった。当測定法はリンパ球の混入している少数の癌細胞の検体のテロメラーゼ活性測定には従来法に比し信頼性が高く、また細胞診と比し客観性という観点から優れた検査法である。
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