研究概要 |
化学療法感受性を規定する癌細胞の特性についての検討をin vitroで行った.DNAミスマッチ修復(DMR)遺伝子hMLH1を欠損したヒト大腸癌細胞株HCT116と第3染色体の導入により欠損を補ったHCT116/+ch3(UCSDR.C.Boland教授より供与)の比較から,DMRの異常は,シスプラチン(CDDP)感受性を軽度上昇させるが,5-フルオロウラシル(5FU)の感受性に変化を与えなかった.また,ヒト大腸癌細胞株OCUC-LM1とその肝高転移細胞株で糖鎖(SLA)を強発現しているOCUC-LM-H3の比較から,肝転移能を規定する因子と感受性低下の関係が示唆されたが,追試中である.さらに,ヒトスキルス胃癌細胞株OCUM-2MとそのCDDP耐性株で細胞内グルタチオン(GSH)濃度の高いOCUM-2M/DDPの比較から,耐性株での5FU感受性の低下が認められ,交叉耐性の存在が示唆された.以上のように,各種抗癌剤に対する感受性の差を比較検討することで、感受性を左右する分子生物学的因子として,DMRの異常は感受性に大きな変化を与えない可能性が考えられた.また,肝転移能を規定する因子と感受性低下の関係が示唆されたが,追試中である.さらに,CDDPの感受性へのGSHの関与が明らかとなった. ヒトスキルス胃癌細胞株OCUM-2MとそのCDDP耐性株での抗癌剤感受性と、薬剤曝露後早期のCellular Injury Response遺伝子c-jun,c-myc mRNAの発現の関係をNorthern Blot Hybridization法により検討したところ,preliminaryな結果として,c-myc mRNAの発現量と感受性の間に正の相関が見られ,現在追試中である.来年度は,in vitroの検討をまとめるとともに,in vivoの検討,臨床検体を用いた検討を進める予定である.
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