末梢血検体を使用し、採血のみによる癌の存在診断と転移能の評価を可能とすることを目的として研究を進めた。現在までに、正常者20名、大腸癌患者(転移なし)20名、大腸癌患者(転移あり)20名、の末梢血を使用し、磁気細胞分離システムを使用して癌の存在診断と転移関連因子6因子の発現性の評価を終了した。癌細胞の存在診断に関しては、従来多くの文献で評価されてきた抗サイトケラチン抗体と今回我々が新たに上皮細胞の同定手段として用いたヒト上皮関連抗原による血中の上皮細胞に対する同定率と特異性の評価し、抗サイトケラチン抗体が上皮細胞以外の血球細胞(好酸球、マクロファージ)に非特異的に結合し上皮細胞として同定される可能性があることと、ヒト上皮関連抗体が特異的に上皮細胞のみを同定可能であることが確認できた。現時点における評価では、大腸癌における磁気細胞分離システムによる癌の存在診断は、病理所見にてsm以下の早期癌では癌細胞の同定率は15%にとどまったがpm以上の進達度を示した症例においては100%診断が可能であることが確認された。また、転移能の評価に関しては、蛍光抗体二重染色法を用いて、転移関連因子として、E-cadherin.α-catenin.β-catenin.sLex.VEGF.PD-ECGFについて評価し、E-cadherin.VEGF.に関してx2検定にてP<0.05にて転移群と非転移群にて優位差が認められた。以上の結果は、癌の存在診断については第57回日本癌学会にて報告した。また、転移能の評価については、第99回外科学会総会にて報告予定である(ワークショップ採用済み)これからの1年で、癌細胞の存在診断に関して、抗体を使用した方法のみでなくFISHを用いた染色体診断を行う予定である。転移関連因子の評価では更にMMP-2.MMP-9.TIMP-1.TIMP-2.MT-1MMP.MT2-MMP.CD44-v6.CD44-v10.P53.nm23.KAi-1.DCC.について評価予定である。
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