研究概要 |
ヒト胃癌株ST-4を免疫原に得られたマウスモノクローナル抗体ST421の抗腫瘍効果について検討した.まず各種ヒト癌株に対するin vitroでの細胞障害性を検討した.ヒト大腸癌株Colo205の培養上清中にST421を添加することにより細胞障害効果が得られたが,他の細胞株では全くみられなかった.ST421と同様の抗原特異性を示す7LE抗体をST421とともに培養土清中に加えると,7LEの濃度依存性に細胞障害が抑制された.ST421で処理したColo205からgenome DNAを抽出し,アガロースゲル電気泳動を行うと,DNA ladderが観察された.またST421で処理したColo205に対しpropidium iodideでDNAを蛍光染色し,フローサイトメータでDNA量の測定を行ったところ,断片化DNAが検出された.以上より本抗体のin vitro細胞障害が,ST421の細胞膜表面抗原への結合により引き起こされるアポトーシスの誘導によるものであることが示唆された.各種ヒト癌株をSCIDマウス皮下に移植したのち,ST421を2週間連日腹腔内投与したところ,ST421陽性細胞株であるColo205,HT-29,WiDrにおいて腫瘍増殖の抑制がみられ,その効果はST421抗原の発現量と相関していた.腫瘍をTunnel法により染色するとST421投与群において有意に高い頻度でアポトーシス細胞を認めた.以上の結果によりST421が本抗原陽性腫瘍細胞に対しアポトーシス誘導効果を示すことが示された. さらに,Colo205より抽出した中性糖脂質を用いた免疫TLCにより,本抗体の抗原エピトープがLewis aおよびdimeric Lewls a 抗原であることが明らかとなった.本抗原を合成する新規ガラクトース転移酵素のクローニングを行い,ST421陰性大腸癌細胞であるHCT15に遺伝子導入したところ,本抗原の発現が確認された.
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