腫瘍関連糖鎖抗原の一つであるdimeric Lewis a抗原を認識するST421は、dimeric Lewis a抗原陽性細胞株である。Colo205細胞株に対し、in vitroおよびin vivoにおいて抗体単独で殺細胞性を示す。われわれはこの作用がアポトーシス誘導によるものであること、またインターフェロンγによりこの作用が増強されることを示した。 さらに、本抗原を合成する新規ガラクトース転移酵素β3Gal-T5をdegenerate PCR法によりクローニングし、本酵素が(1)消化管上皮においてdimeric Lewis a抗原を含むルイス1型抗原を合成する酵素であること、(2)dimeric Lewis a抗原の量を決定していること、(3)dimeric Lewis a抗原陰性細胞株であるHCT-15が本遺伝子の導入により細胞表面に本抗原を発現することを確認した。 また、大腸正常および癌組織における発現を、新鮮凍結標本より抽出したRNAより合成したcDNAを用い、定量的PCR法(competitive RT-PCR method)により定量したところ、本酵素の転写産物量は癌組織において有意に低下していた。 そこで、発癌による本酵素の発現低下機構を解明するため、本酵素の転写領域の解析を行った。ヒトゲノムライブラリーより本遺伝子の転写調節領域をクローニングし、種々の長さの欠失変異体を作成し、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、転写開始点の上流約200塩基近傍に主要な転写調節領域が存在することが判明した。また、この部位をプローブとしてゲルシフトアッセイを行い、転写調節因子の同定を試みている。
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