研究概要 |
われわれは,より高い肝細胞機能の発現とその維持を目指した遺伝子操作によるスーパー肝細胞の開発を目指している.そのため,実質肝細胞の分裂を促進する因子として肝再生時にIL-6が大きく関わるとされる報告に注目し,以下の実験を行っている. (1) 実質肝細胞の培養および遺伝子導入による肝細胞機能の評価 培養肝細胞には,Cell lineではヒト肝芽細胞腫株由来のHepG2およびラット肝癌細胞由来のH35,またそのほかでは実験系として確立しており,機能評価を比較的容易に行なえるラットの初代肝細胞を用いている.これらに,RT-PCR法により作成したhuman IL-6cDNAを挿入したブラスミドベクターを遺伝子導入した.手法としては,DNAと荷電によって結合したリポソームの細胞内への取り込みを利用して遺伝子導入するリポソーム法(lipofection)を行った.培養細胞機能として,遺伝子導入によるhuman IL-6産生能,また蛋白合成能評価として培養土清のアルブミン合成能,解毒能評価として培養上清へのアンモニア負荷後の代謝能,alamar blueを用いた増殖能などを評価した. (2)結果 human IL-6cDNAを挿入したプラスミドベクターを遺伝子導入により,cell lineの細胞およびラット初代肝細胞いずれにおいてもhuman IL-6の産生がELISA法による測定で認められ,正常では恒常的産生が見られない実質肝細胞からの産生が確認された.細胞機能評価は現在実験継続中である. (3)今後の展望 IL-6遺伝子を発現する組み換えアデノウイルスの作成を行い,リポソーム法と併せて上記実験を施行する予定である.
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