肝細胞成長促成因子(Hepatocyte growth factor以下HGF)は肝細胞の成熟に関与している。HGFを持続的に産生する細胞を肝切除後、薬剤性肝炎等の実験動物に投与することで、肝機能を改善させる結果が報告されている。しかしHGFは濃度や、期間により、その働きが変わり肝癌の発育促進、あるいは転移に関与するという報告もある。そこでHGF遺伝子を導入し、コントロールすることを試みる。Cre/loxP recombination systemは、導入遺伝子発現のコントロールを可能にし得る方法として注目されている。lox配列とは哺乳類の細胞には存在しない34個の塩基配列で、Cre recombinase(クレ組換え酵素)が働くと相同組み換えを起こすことが知られている。つまり、クレ組換え酵素存在下では2つのloxP配列に挟まれた遺伝子領域は切り離され転写、翻訳されることがなくなる。このシステムを利用して、導入遺伝子の発現をコントロールし、HGFの生理学的作用や周術期における役割を検討し、肝切除後の肝再生補助に適応したい。マウスHGF cDNAを含むplasmidを購入し、DNAを抽出、精製する。HGF exon 1とexon 2から15に特異的なPCRプライマーを作成し、exon 1、およびexon 2から15を増幅する。マウスGenomic libraryよりGenomic DNAを入手し、HGF exon 1のPCR産物をprobeとしてexon 1を含むファージを単離し、ファージDNAを精製する。 loxP配列を含むファージDNAをCLONTECHより購入し、HGF exon 1を含むGenomicDNAを2つのloxP配列の間に挿入しloxP-HGF exon 1-loxPを得る。この下流にexon 2から15のcDNAを結合させ導入遺伝子を精製する。 現在、この導入遺伝子を作製中である。
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