1. 静脈グラフトの病理組織学的変化は(1)血栓器質化像、(2)びまん性線維細胞性内膜肥厚像、(3)“動脈硬化性"内膜像の3つに分類された。 2. (1)血栓器質化像はバイパス後早期の閉塞性血栓が器質化組織に置換されたのもであり、構成細胞は平滑筋細胞、マクロファージ、および微小血管であった。(2)びまん性線維細胞性内膜肥厚像の構成細胞成分は平滑筋細胞が主体であり、時に少数のマクロファージが認められた。(3)“動脈硬化性"内膜像は2種類の組織像に分類された。まず平滑筋細胞を主体とし、マクロファージやTリンパ球などの炎症性細胞の少ない“動脈硬化性"内膜像とマクロファージやTリンパ球の集簇が高度で、平滑筋細胞の少ない“動脈硬化性"内膜像に分類された。 3. 酸化LDLの静脈グラフトにおける局在を検索したところ、血栓器質化像には酸化LDLの局在は認められなかった。びまん性線維細胞性内膜肥厚を示す静脈グラフトにも酸化LDLの局在は認められなかった。一方、“動脈硬化性"内膜像を呈した静脈グラフトのうち平滑筋細胞を主体とし、マクロファージやTリンパ球などの炎症性細胞の少ない“動脈硬化性"内膜には酸化LDLの局在は認めなかった。しかし、マクロファージやTリンパ球の集簇が高度で、平滑筋細胞の少ない“動脈硬化性"内膜部には酸化LDLが陽性であり、その局在はマクロファージの集積部位にほぼ一致していた。 4. 以上の結果よりヒト静脈グラフトの“動脈硬化性"病変進展における、マクロファージやTリンパ球などの炎症性細胞の集簇には、酸化LDLが関与することが強く示唆される。
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