当初の計画通り患者の家族にinfomed concentをとった上で23例の小児開心術患者より採血を行った。うち8例でMDSを投与した。採取した血液は遠心分離しThrombomodulin、過酸化脂質、補体C3、顆粒球エラスターゼの測定を行った。患者は年長児軽症例、年少児重症例に分けて各々対照群とMDS群を比較した。 現時点での結果:体外循環前後で軽症例対照群ではThrombomodulin(FU/mL)は3.7±1.4から5.1±1.9に増加するのに対し軽症MDS群は4.2±0.7から4.5±0.5に増加するのみであった。また顆粒球エラスターゼ(μg/L)も軽症例対照群157±76から824±185、軽症MDS群101±18から555±263と増加は対照群の方が大きかった。内皮細胞障害を最も顕著に反映する肺酸素化能の指標であるrespiratory indexも術後3、6時間で軽症例対照群は1.53±0.29、1.64±0.68であるのに対し、軽症MDS群では1.20±0.08、1.23±0.20と良好に経過した。過酸化脂質、C3に関しては両群間で差はなかった。重症例に関しては全指標について両群間で差は認めなかった。いづれの症例においても検体の採取やMDS投与によって患者に不都合を生じることはなかった。 この結果より軽症例では当初仮定したとおりの結果が出ていると考えられるが、重症例ではMDSの効果は現れていない。今後軽症例では症例数を重ねていくこととし、重症例ではMDSの投与量を増やすことを検討している。
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