アポトーシスは炎症反応、宿主の免疫反応、そして組織障害のメカニズムなどの制御に重要な役割を果たしているとされる。脂肪酸生成酵素(fatty acid synthetase:Fas)は、細胞膜に結合したタンパクのひとつであって、Fasリガンド(Fas ligand:Fas-L)の仲介を経てアポトーシスを誘導する物質の一つとして広く知られている。可溶性のFas(sFas)はメッセンジャーRNA(mRNA)の合成経路の途中で生成され(translation product)、FasとFas-Lとの連携を介した細胞膜Fas分子の働きに拮抗している。一方、sFasのリガンド(sFas-L)は細胞表面から放出され、アポトーシスを誘導する物質としての働きをしている。 アポトーシスおよび心臓手術における外科的侵襲と、FasとFas-Lが仲介して示す作用との関連性を研究するために、心臓手術患者14例においてsFasおよびsFas-Lの血漿中のレベルを調べた。 方法:血液サンプルは手術前、人工心肺終了時、手術終了時、および手術終了12時間後に採取した。血漿中のsFasおよびsFas-Lレベルはsandwich enzyme-linked immunosorbent assey法を用いて調べた。 結果:手術前と比較すると、手術終了時にはsFasの血漿中のレベルは有意に上昇し、そして手術12時間後には手術前のレベルにまで戻ることが認められた。一方、手術中あるいは手術後において、血漿中にsFas-Lは検出されなかった。 結論:メカ二ズムや意義はまだ不明なるも、心臓手術患者において血漿中のsFasレベルが上昇することが認められた。
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