大動脈屈曲部への追従性が極めて良好であり、本治療の最終目的である動脈瘤の破裂防止、すなわち瘤内への血流遮断効果も充分に持ち合わせた血管内挿型人工血管の開発を中心に研究を行った。 平成10年度と同様に、3次元CTの画像データーをもとに光造形装置Solid Creation Systemを用い、胸部大動脈瘤の実体モデルの作成を継続した。 平成10年度にコンピューターによる3次元イメージングを用いて試作した、大動脈屈曲部に良好に追従する血管内挿型人工血管を再評価するために、その骨格であるステントの拡張力(radial force)、およびステントを被覆する人工血管の強度を測定し、再度その材質、形状を検討し、長期間の大動脈内留置に対しても充分な耐久性を有する血管内挿型人工血管を作成した。次に胸部大動脈瘤の実体モデルを水流回路内に組み込み、長期間、実際の大動脈内よりも厳しい条件下(回路内圧を高圧とする)において試験を行い、その耐久性を確認した。また、動脈瘤内への血流遮断効果を高める目的で、人工血管の大動脈内固定部位(landing zone)に工夫を凝らし、瘤内への血液漏出の防止効果を向上させた。水流下における水圧(臨床では血圧)が原因となる血管内挿型人工血管放出時の移動を最小限にすることを目的として、ステント先端に改良を加え、安全性をより向上させた。 以上より、 1)屈強部への追従性が極めて良好である。 2)充分なステントの拡張力を有し、耐久性に優れている。 3)大動脈瘤内への血流遮断効果に優れている。 4)放出時の移動の防止効果が高く、安全性に優れている。 上記の4つの条件を満たした血管内挿型人工血管を最終的に開発した。 この血管内挿型人工血管の臨床応用が可能となれば、本治療の適応はさらに拡大し、より安全で確実性の高い優れた治療が可能になると考えられる。
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